みなさんにとって、現在までで一番「衝撃的だった旅」は思い浮かびますか?
私にとっては、海外でのグルメ&観光旅行も印象深いですが、衝撃的といえるのは、『屋久島一人旅での素泊まりの宿』です。宿泊業を生業としている私にとって、「考えられない宿=私の常識にはない宿」でした。
たまたま出会ったとある宿
屋久島に降り立ち、次の日の宿泊場所を探す際に、たまたま私の目に留まったのが、とても素朴なこの宿だったのですが、時間があったのでフラフラ歩いてその宿へ予約を入れに向かいました。宿に到着すると、トントン、トントンと料理をする音がしていたので、「すいませ~ん!」とお声がけさせていただきました。調理の手を止め出てきてくださった若い男性に予約をしたい旨を伝えると「何とか次の日は泊まれますよ!」とのことで予約ができました。
そして次の日、少々不安を抱きながらその宿に向かいました。すると昨日とは違う男性が、「田辺さんね!いらっしゃい!ここがあなたの部屋で、ここがお風呂!お風呂は一つしかないから順番ね。順番が回ってきたら声をかけるわ!それから、ここが食堂で……で、今晩の食事はどうするつもり?」と気さくに対応してくださいました。とてもフレンドリーな感じで、宿の雰囲気に合ってるし、良いんじゃないの!って感じでした。「夕飯は、まだ決めてませんが…」と答えると、「あそう、だったら今晩はみんなで近くの居酒屋に行くから一緒にどう?」と。勢いに押されて言われるがままに居酒屋へ行くことになりました。そして、この居酒屋で交わされるみなさんとの会話の中で、この宿とこの宿の仕組みの全貌が分かってきたのです。
夕食時にわかった「なんじゃコリャ~!」な事実
その夜は12名ほどが宿泊していて、みんなで居酒屋に行くことになったのですが、前夜はみんなで料理を作り楽しんだようでした。そして分かったことは何かといえば、それまでにこの宿でお会いした人たちみんなが、私と同じお客様だったという事実です。
「調理場で料理をしていて、私の予約を受けてくれた人」も「私の部屋と宿のルールを教えてくれた人」も、そして、最終的に「宿泊費をお受けしてくれた人」も。この時点で「なんじゃコリャ~!!」です(結局、最後まで宿のオーナーには一度も会いませんでした)。
その居酒屋では、それぞれが定食を注文しお支払いをするのですが、飲み物(焼酎)はその居酒屋に宿の名前でキープされているモノを飲んで良いというシステム。それがなくなったら新たにキープして料金を払い帰ってくるのです。面白い。何だかわからない「ほのぼのルール」。
この宿では、一日でも早く宿泊した人が「先輩」で、次に来る人にルールをお教えすることが当たり前に行われているのです。すごいことになっています。聞くところによると、何泊もされて「主」的な雰囲気をかもし出している人もおられるようです。
多様な人たちがつながる場
居酒屋から宿に戻ると、またまた宴会がはじまるのですが、この様な宿に宿泊されている方々は、なかなかの強者でして、全国のいろいろな所を旅している人ばかり。観光業を生業としている私なんかより何百倍も旅行通で、おもしろい旅行ネタが宴会の間中、飛び交いまくっていました。「あそこは最高!」「A観光地はB観光地に比べたら〇〇」「あのC観光地は〇〇をめざしているけど滑ってるな(笑)」「あそこのガイドさんは最高!」と、おもしろい話がわんさか出てくるのです!よくあるガイドブックより、むちゃくちゃおもしろかったです。
このような宿(1泊素泊まり3,500円ほどだったと記憶していますが)に宿泊されているみなさんですが、次の日はそれぞれがそれぞれの目的でツアーに参加されていました。それも、ツアー料金は15,000円以上のものなどに。つまり、この方々にとっての「旅」は、『自然を安全に楽しむこと』と『人との交流を楽しむこと(知らない旅の話を教えてくれる)』であり、「安いから」という理由でこの宿を選んだわけではなかったのです。
また、この宿に宿泊した経験をもつ人たちでのオフ会が、東京や大阪などの居酒屋で行われているそうです。私は参加してことがありませんが、想像するに「この宿に宿泊する=価値観が似た人たち」で、お酒を飲みながら大盛りあがり!すごすぎませんか!?!?!考えられない。宿で生まれた交流が、宿を超えたところでも続いているんですから。
「バイク乗りの世界では聞いたことがあるよ!」とお聞きしたこともありますが、非常におもしろい!おもしろすぎる!!個々の目的をしっかりと果たせる宿。次に繋がる宿。とても人間臭い宿。心温かい宿。この宿に宿泊したことを誇りに思える宿。コミュニケションが広がる宿。同じ価値観の人とお会いできる宿。少人力で運営できる宿。
そんな私の「衝撃的な宿」紹介でした。
みなさんはどの様な「衝撃的な旅」をお持ちですか?教えてくださいね!
(代表理事 田辺一彦)